三途の川のお茶屋さん
願ってもない、タイミングだ。しかも十夜は自身の仕事を終えた後で、この後はずっとここに留まる心積もりのようだ。
「十夜、ひとつお願いしてもいいですか?」
「? なんだ?」
「あの子、なんです」
私が女の子を指し示す。眠たげにしていた女の子は、ついにうつらうつらと船を漕ぎ始めていた。
「! よし、俺に任せろ。幸子は店の方をやっていて構わんぞ」
十夜は一目見て、状況を全てを汲み取ってくれたようで、私の肩をポンと叩いて女の子のところに向かった。
正直、女の子を見ながら店内を切り盛りするのはかなり無理があったから、私はホッと胸を撫で下ろした。
けれど幼女と十夜という、未知数な組み合わせに、若干の不安も感じていた。
……十夜に子供の相手って、大丈夫なのかな?? 視線は二人に釘付けになっていた。
「お姉さん、お茶のおかわりをお願いします」
「! はい、ただいま」
けれど二人の掛け合いを見る前に、私はお客様からの呼びかけで、接客に戻った。その後も慌ただしく御用聞きや配膳に追われた。