三途の川のお茶屋さん


女の子はコクンと頷いた。

望んで抱き上げられたはずの女の子は、けれど私が抱けばやはり体を固くする。女の子の手は、私の肩に置くのを躊躇って宙を彷徨っていた。

私は構わずに、抱き上げた女の子をキュッと抱き締めた。


すると女の子の手が、そっと、そおっと私の肩を抱き返した。

たったそれだけの事だけれど、嬉しさに胸が詰まった。

「……あたし、本当はずっと、こうしてほしかったの。ありがとう、マ、ママッ。バイバイっ!」

女の子は太陽みたいに微笑むと、私の腕からピョンと降り、一人船に走っていった。

私は女の子の小さな背中を食い入るように見つめて、立ち尽くしていた。


「本日最終便、出航いたしまーす!」



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