三途の川のお茶屋さん
だけどここで『ほほえみ茶屋』を開いているとよく分かる。
ここは生前の全てのしがらみから解き放たれて、魂が集う場所。ここに訪れる誰も彼も、穏やかで優しい人ばかり。
人の本質とは、きっと温かく優しいのだ。
「だけどここは違いますね。時間の流れが緩やかで、とても居心地がいいわ」
女性は穏やかな表情で、窓越しに宙を仰ぐ。
青い瞳にも、ここの景色が同じく映っている事が嬉しかった。
「そう仰っていただけると嬉しいです」
「ところで私は船に乗らなくていいのかしら? 皆さん船乗り場に集まっているようよ……。私は先程も一本、船を見送ってしまっているわ」
間もなく今日、三便目の船が出る。女性以外は、全員が『ほほえみ茶屋』を出て船乗り場に向かっていた。
「はい、ここにいて下さい。お茶を淹れ直します」
「……そう、お手洗いをお借りするわね」
私は空いた湯呑みを取って厨房に戻り、新しくお茶を淹れ直した。