三途の川のお茶屋さん


ま、間に合った!!

「懸人さん助かりました!! この船に異国のお客様が誤って乗船してしまっています! その方を下船させていただきたいんです!」

船に辿り着いた私は、経緯を簡潔に懸人さんに告げた。船の定期運航を妨げる訳には行かない。

ここは懸人さんに協力を仰ぐのが、対処としては最も適切だろう。

「えっ!? ……あ、スカーフの女性っ! 幸子さん、ちょっと待っていて下さい!!」 

懸人さんはまさかと言った表情をした。けれどすぐに、ハッと気付いた様子で、船内に戻っていった。

「幸子さん! こちらのお客様で間違いない!?」

懸人さんはすぐに、中から一人の女性の腕を引いて戻ってきた。女性は顔の造作を隠すように、深くスカーフを被っていた。

けれど一目で分かった。この女性に間違いない!

「その方です!」

そうして女性は、懸人さんの手で船を下ろされた。



< 83 / 329 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop