三途の川のお茶屋さん


「同じ道を、行っては駄目なの?」

女性は静かに天使の少年に問いかけた。

「それは上手くありません。絶対に駄目とは申しませんが、それを強行すれば貴方の来世がジリ貧になります。せっかく巡り逢えても夫と幸せにはなれませんよ?」

! ジリ貧!?

天使の少年が語った予想外の台詞に、私の目が点になった。

取り込み中の天使の少年と女性の間に割って入るのは躊躇われ、私は十夜の袖を引いた。

「と、十夜? 今のジリ貧って、どういう事ですか?」
「弔いは死者の魂を彩ると言ったろう?」

それはお母さんを見送った時に、十夜に聞かされていた。

「はい」

それとこれとが、どう関係してくるのか。

「彼女にあてた弔いが、この地には届かんのだ。一切の祝福を受けぬまま転生を果たせば当然その魂は煌かない。その魂はジリジリと貧しくなり、たとえ夫と巡り逢っても幸福にはなれないという事だ」



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