三途の川のお茶屋さん
これは聞くまでもないだろう。私はきな粉、あんこ、醤油ダレ、全部の味を包んだ。
「お爺さん、お待たせしました」
団子の包みを老爺に手渡す。
「おお! 香ばしいのぉ!」
ほくほく顔で老爺は包みを受け取った。
あれ??
間近に老爺を見て、ふと感じた違和感。
!!
違和感の正体はすぐに分かった。老爺の瞳が、しっかりと私を見つめていた。
『ほほえみ茶屋』のお客様とは、基本的に視線が合わない。
ご用聞きやお会計、もちろんお客様と正面から向かい合う。私はお客様を見て、お客様も私を見る。
けれど、お客様の瞳は私を映しても、見てはいない。現の光を映さぬ瞳はどこまでも空虚で、何も見ない。
『見る』という行為はきっと、心があって初めて成立する行為なのだ。
けれど老爺と私の視線は、確かにピタリと合っていた。