三途の川のお茶屋さん


「あの懸人さん、折角来ていただいたのに申し訳ないんですが、今日は十夜の所在が知れなくて」
「いいえ幸子さん、そうではなくてですね、私は十夜からの伝言を預かってきたんです」

なんと、懸人さんが十夜の所在を知っていた。

「十夜からの伝言は、所用で遅くなるから晩飯はいらない、先に休んでいてくれと、こうです」

それはまた、随分とざっくりした伝言だ。

「実は十夜、以前に管理報告で天界にあがる予定を、一回すっぽかしていたようなんです。それで十夜と同じ七天神の古参で、管理者の統括役でもある仁王様に呼び出されてしまったんです」

「呼び出しって、それは大丈夫なんですか?」

職務に真面目過ぎるくらい真面目な十夜が、天界にあがる予定を忘れるなんてあるの?

これはかなり、意外に思った。



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