三途の川のお茶屋さん
「ん? まぁ、そんなのはどの管理者も一度や二度はありますから、なんという事もないでしょう。それよりも、その仁王様というのは大層お酒好きでなんですよ。もし宴席になだれ込んで、二次会三次会となればなかなか抜け出すも難しいでしょう。十夜、今晩は戻れないかもしれません」
私の心の声が伝わった訳でもないだろうが、懸人さんが補足をくれた。
けれど『二次会』『三次会』って……私は内心、笑いを堪えるのに必死だった。
「幸子さん?」
俯いて挙動不審に肩を揺らす私を、懸人さんが心配そうに覗き込んだ。
「な、なんでもないです。それより懸人さん、わざわざありがとうございます。それを伝える為に戻ってきてくれたんですよね?」
それにしても、懸人さんはいつもこうやって細やかな気遣いをしてくれる。
本当に、ありがたい。
「いえ、私は船を漕ぐのは苦にもなりませんから」
懸人さんは静かに微笑んで、首を横に振った。