瑠璃色の涙
けれど私は、和田君とはまだ喋ったことがない。というか、彼自体が私を認識しているのか、ぐらいの距離感。

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「葉那乃、相変わらず美声だねー」

もちろん、カラオケに着いて告白大会という流れにはならず、普通に歌った。一番手はいつも決まって葉那乃だ。クラス一の美声を持つから、と、秦がほざいていたことに対し、葉那乃が乗せられて以来、ずっとだ。

「りーつ」

「あっ、葉那乃、お疲れ様」

相も変わらないくせ毛を揺らしながら、隣に座ってきたのは、超高音を歌いこなした女の子だ。

「葎は歌わないの?」

素朴な疑問に、シンプルに、うん、とだけ答える。

「そっかあ」

そう言って、葉那乃は席から離れ、潤のところに行ってしまった。

......あれ?

葉那乃が席を離れて、はてなが浮かんだ。私の記憶によると、葉那乃と潤の関係は良好じゃなかったはず。狼少年が苦手な葉那乃が、何故潤のところに?こういう細かいところにいちいち気付くのが、私。

「では、お次はクラスのモテ男、遥君でーす」

といった感じに、ふざけた口振りで言ってみせた秦に、笑いが込みあげてきたせいか、先程の疑問は無くなっていた。











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