瑠璃色の涙

君は笑う

「......ん...」

目の前が、断然白かった。
純白だと言えるほど、白かった。

「先生!目が覚めました!」

まだ完全に覚醒していない頭で、言葉を受理するのはかなり難しい。女の人の声だった。


「いや、待て。危険だ」

と、この言葉で、頭がはっきりし始めた。

危険。
私は、危険だと。

「...!はい!」

近付きかけた女の人は、私から遠ざかる。

「脈が正常に動いているか、確かめてみる」


医師の白衣を着た男が、ベッドの淵にある私の手を取ろうとする。自分から彼に手をやろう。そう思った。
けれど、

「......て、ぶくろ...」

男の手には、ポリエチレンの手袋がしっかりとされてあった。
目が覚めての第一声がそれだったのだけれど、音量は小さく、彼にも彼女にも届いていないようだった。
何事もなかったかのように私の手との距離を縮める、男。動かしかけた手を止め、代わりに近付いてくる男の手を払った。

「な...!」

強めに払ったせいか、男の手は少しばかり赤くなっている。

「先生!?大丈夫ですか!」

その、女の人にも、腹が立った。

「...少し、痛めただけだ」

私を睨みながら放つ。
そこで私は、第二声目となる言葉を始めた。

「腫れ物を扱うように接するの、やめて下さい」






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