瑠璃色の涙
声帯が思うような高低で動いてくれない。思っていたよりも低い声だった。






そのとき。

「医者がそんなんでいいのかって言ってんだよ」




なんていう声が、聞こえた。



「遥......」
                        
私はその人物の名前を呼んだ。...いや、厳密には、声が出た。

「遅くなってごめんね」

そう言って、私に駆け寄り、頭を撫でてくれた。
そんな彼に、私は有り得ないくらいの安心感で身を包まれる。

「...っ......何で、来てくれたの...」

気を緩めれば、すぐにでも溢れ出しそうな涙を懸命に抑える。

「.......葎が、俺を呼んでる気がしたから」

優しい笑顔でそう言う。その声。その表情。私は、彼が大好きなんだ。










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