瑠璃色の涙
「っ...」

いつもなら、キザと言ってすぐに返せるのに。
何だか今は、その言葉が胸に素直に入ってくる。

そして、私の涙を誘う。

「いつもならキザって言うくせに」

微笑した。私は彼彼女そっちのけで、遥に意識を集中させた。
なんて、違う。無意識にそうなっていたのだ。

「おい」

今度は彼彼女の方を向き、私への声とは全く違う声色で話し始める。そんな遥に、彼彼女は肩を震わせた。

「病気で弱ってる患者を、汚いもの扱いすんじゃねえ。あんたらは病気になったことがないから分からないかもしれないけど、患者は必死に戦ってんだ。あんたらが自分の腕に酔ってる間でも、辛い治療に耐えてんだ」

聞いたことのない口調と声に、びっくりしてしまった。
そんな私をよそに、続ける。

「何が危険だ。患者に寄り添ってあげていない時点で、この病院の方が危険じゃねえか」

そこで私が医者に目をやった。彼は視線に気付き、手袋をしている手を気まずそうに後ろに隠す。









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