私、花嫁にはなれませんっ!
するとお父さんは、リビングへ家族を誘い、ゆっくりと席に腰を掛けてからお母さんと交互にポツリ、ポツリと話し始めた。

『美紅、黙っててごめんな。そっか、心構えはしてたんだけど、早速入学初日からだったか…、本当に抜かりないな、あの人は。』

ジッとお父さんを見つめると、微かにお父さんの手が震えている。

『私たちには過去、共通のとても大切な人がいてね。その人は世界中の人の役に立ちたいと一生懸命に新薬の研究をしていたの。その時、その人は新薬の為に100億ほどの出資を募っていたのだけど、途中ある出来事で命の危険にさらされてしまったの』

お母さんも目に涙を溜めていて、溢れそうになるのを必死に堪えているのが分かる。

『結局、その人は亡くなってしまって…仲の良かった私たちが残されたものとして、その借金の肩代わりをして…』


『でも当然払える額じゃない…。その時はもう二人とも生まれていて、私達の娘だったし、でも、今後の生活に対して100億を返していく見通しも検討もなくてね…』


『途方にくれて、一家心中も考えていた、そんな時、美紅に花嫁という条件で100億を肩代わりしてくれた人が現れたの
。』
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