Love season
あなたの名前
入学式から1週間。
すっかり私は高校生活に慣れていた。
中庭にあった桜の木も花はほとんど散ってしまっている。
あの日から毎日、教室から中庭を見ている。
あ、今日もいる。
今日もあの男子生徒はほとんど散ってしまっている桜の木を、入学式の日と同じように悲しそうに見つめていた。
「春香、何見てるの?」
と、突然私に話しかけてきたのは入学式の日に声をかけてきた夏実だ。
私たちはいつのまにか友だちになり、今では呼び捨てで互いの名前を呼びあっている。
「あ、またあの人のこと見てたんでしょ」
「ちがっ」
「あの人はやめといた方がいいよ」
「え、なんで?」
やばい、思わず聞き返してしまった。
「2年の原田真先輩。授業にはまともに出てないし、告白されても冷たく断ってばっかりなんだって」
「そう、なんだ」
中庭にいる彼の方を見る。
あの人は原田真っていうのか。
まともに授業にも出なくて告白も断る、か。
でも、なんか理由があるような気がするのよね......
「あんまりいい噂もないし、やめときなよ」
「いや、私あの人のこと狙ってるわけじゃないから」
「春香ったら照れちゃって~」
「もう、いい加減にして!」
まぁ、こうは言っているけれど、自分の本当の気持ちくらいはわかっている。
私は彼に一目惚れをした。
入学式の日に。
それは私の初恋でもあった。
けれど私はこの気持ちを伝えるつもりはない。
周りからの目も気になるし、あの人は顔も整ってるから女子人気も高い。
そんな人に告白するなんて、私は無理だと思っていた。