御曹司は恋の音色にとらわれる
ステーキを食べ終えた私は、
ショッピングモールの試着室のような場所で、
ドレスに着替える。

ケースからヴァイオリンを取りだし、
左肩(鎖骨の上)にヴァイオリンを乗せ、
ヴァイオリンを高く持ち上げるように構える。

正面から見て左が低音、右が高音の弦であり、
A線とD線、D線とG線、A線とE線をそれぞれ同時に弾いて、
完全五度の和音の特有の響きを聞いてペグを回し調弦する。

マスターは店に戻っており。
中條さんも燕尾服に着替え、ぴりりとした顔をしてる。

胸がどくどく言う。

この適度な緊張感。

自然と気持ちが引き締まる。

「さて、行きますか」

中條さんの言葉にうなずき、
時間を確認し、ステージへ向かった。
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