御曹司は恋の音色にとらわれる
「改めまして、来てもらってありがとうございます、
 俺、五十嵐拓と言います」

「私は、高橋美華です」

「いつものステージでの衣装も素敵ですが、
 その、今の装いも素敵ですね」

歯の浮きそうなセリフながらも、
どこか一生懸命言っているのを感じ、
悪い人ではなさそうと、彼を見る。

「その、美華さんって、華やかで、名前すごく似合ってますね」

今日後輩に、名前のわりに地味だと言われた事を思い出し、
心の中で評価が分かれたわと思いながら、
嫌な気持ちになる事はなく、彼の言葉に耳を傾けた。

「演奏している姿、すごく素敵で、
 こうして話しているのが夢のよ・・」

「はいよ、サンドとナポリタン、どっちがどっちだい?」

相変わらず、空気を読ます、強引な店主に、
五十嵐さんは戸惑いつつ、「えっと、サンドは彼女で・・・」
としどろもどろに対応していた。
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