御曹司は恋の音色にとらわれる
「お待ちかねの、これだよ」

マスターは封筒を差し出す。

封を開けて見ると、<『夜の猫』で待っています>
とただ一行だけ書き込まれていた。

覗き込んだ中條さんは、
「どうせならホテルとかにすればいいのに」とぶつぶつ言っていたが、
あの約束の場所から始める彼が、私にはすごく素敵に思えていた。

「良かったね」

マスターが、心から言ってくれる。

「はい」

手紙を置いて、フィッティングルームに入る。

7月に入ってから、私服はスカートやワンピースだったが、
中條さんやマスターは、そんな私の女心などお見通しだろう。
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