御曹司は恋の音色にとらわれる
「ほんっとごめん、申し訳ない」

演奏が終わり、高級イタリアンを出すお店で、
ディナーをしている。

ここまで贅沢する必要はないと言ったが、
お詫びだからと、五十嵐さんが譲らなかった。

五十嵐さんが曲を聴いていたのは、1曲だけ、
2曲目の始めから、うとうとしており、
2曲目の3楽章では、完全に寝てしまっていた。

しゅんとなっている彼に、
気にしなくていいと何度も言っているのだが、
彼にとっては、とてもショックな事だったようだ。

「眠れるって事は、心地よかったって事でしょう、
 いい演奏だったって事よ」

あまりにも真剣に謝る彼を、
大型犬みたいで可愛いと思った事を秘密にしながら慰める。
< 35 / 102 >

この作品をシェア

pagetop