御曹司は恋の音色にとらわれる
東京でも有名な楽器屋へ、
ギター、ベース、鍵盤、中古まで、
床だけではなく、壁にまで楽器が飾られている。

中古だけでも1千点は取り揃えている店内は、
見る者を圧倒し、音楽好きにはこの上ない楽しみの場所。

そこでヴァイオリンの弦を見て、
いつも使っている弦を選び、カウンターへ持っていく。

それと、予約していたのをと、楽譜を受け取った。

「もういいの?」

「買えたし、十分よ」

車に滑り込む。

「ヴァイオリンの弦って何?」

「昔はガットと言われる羊の腸だったんだけど、今は、
 合成樹脂繊維の最先端技術を取り入れた芯に、
 何か金属の巻き線して?
 もう、きちんとした事は忘れちゃったわ」

「とにかく最先端なんだね」

「弦も進歩しているのよ、温度や湿度に強いって話だし」

「そうなの?」

「うーん、うろ覚えだけど・・・多分」
 
「難しい事聞いてごめん」

「いや、いいのよ」
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