御曹司は恋の音色にとらわれる
すると、派手なネイルに意思の強そうな女性が、
会場に響くような大きな声を上げた。

「プロなんでしょう?難しい曲弾いてもらいましょうよ」

周りはどうした物かと、顔色を伺う。

この場で、大きな声を上げられるのだ、
それなりの力を持った令嬢だろう。

会場がざわざわした時、会長が声を上げる。

「初めまして、わしが創(はじめ)じゃ」

私も会長に頭を下げ、

「高橋美華と申します」

と挨拶する。

「演奏して欲しいと言う依頼もあるようじゃが、どうかね」

流石、と思う。
この老人に演奏しないと言うと、本当に演奏しなくても、
誰も問題だとは思わないんだろう。
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