御曹司は恋の音色にとらわれる
「どうだった、優斗君」

何も言わずに、突っ立っている優斗君の元へ行く。

優斗君は、静かに涙を流していた。

私の視線に気づいた優斗君は、

「僕、弱くないからね」

と言った、涙を見られてテレだろう。

「もう、お上手ですね、凄いですねとかないの」

母親の結奈さんが、優斗君の前に来て言う。

「言葉が思い浮かばない」

「最高の誉め言葉よ」

ちらりと周りを見渡すも、声を上げた女性は
もういないようだった。

今だ興奮に包まれる会場で、私は握手に追われる事となった。
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