御曹司は恋の音色にとらわれる
彼・・・名前も知らないのだから彼と言うしかない。

が、ここ『ステーキバー メロディ』
に来たのは3月、まだ雪が残る寒い日だった。

マスターの話によると、カウンターでお酒を飲んでいたのだが、
その時バーテンダーの人に私の事を聞き、
毎週演奏していると知って、毎回足を運こんでくれている。

最初と2回目はカウンターで、
3回目からはステージに一番近いテーブルに、
お酒を飲まず、始めから最後まで、曲に耳を傾けてくれている。

「クラシックファンかもしれませんよ」

私の言葉に二人が首をふる。

「いや、美華ちゃん狙いだよ」

「私もマスター長年やってますがね、
 その勘で言わせてもらっても、恋ですね」
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