御曹司は恋の音色にとらわれる
「お疲れ、今日も最高の演奏だった」

後部座席に入るなり、拓が言ってくれる。

「はい、これ」

小さな花のブーケ。

「前、欲しいって言っていた花」

「ありがとう」

ブーケを顔に近づけて、口が嬉しくて歪んでいるのを隠す。

「では、出発致しますね」

拓が「お願いします」と言うと、車は滑るように動き出した。

「軽井沢に行くのね?」

「うん、管理人に連絡して、手配してもらっている」

「・・・何か気合入っている?」

「・・・まあ、この前のリベンジも兼ねて・・・」
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