御曹司は恋の音色にとらわれる
「拓はお酒だけでいいの?」

車の中で、本家のお手伝いさんが作ったサンドイッチを
つまんでいたが、大食いの拓に足りたのか、不安になる。

「大丈夫、乾杯しよう」

そう言ってグラスをカチンと軽くぶつけ合う。

喉を通るシャンパンは極上の味で、
ふわふわとした気分にしてくれる。

ドレスのままでいる事もあり、自分がどこかの貴婦人にでも、
なったかのような錯覚を覚える。

「美華の事、好きだよ。

 なんか、ありきたりの言葉でしか表現できない自分が嫌だけど、
 本当に好きなんだ、
 
 美華に出会って、俺の世界は色づいた、
 心が攫われるって事を知った、
 自分以上に、誰かの事を大切に思えるなんて初めてで、
 そんな君が、俺を好きで傍にいてくれて、
 奇跡って本当にあるんだと思った」
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