キスすらできない。



結果、

「あちゃー、残念」

「…おいちゃんの阿漕」

「いやいや、日陽ちゃん狙ってたのは普通に落ちるからね?」

「つまりは落ちない景品もあると」

「分かった分かった。もう一発だけサービスしてあげるから」

当たりはしても倒れるだけで落ちなかった景品。

それに不満を述べればもう一発だけサービスになって、貰った弾を再びキュッとセットしているタイミング。

「おねーさん、」

「………」

トントンと叩かれた肩と呼びかけ。

嫌でも自分に対してだと理解せざるを得なくて、チラリと視線だけを向ければ同年代くらいの男が3人。

実に安い愛想を貼りつけ私の事を覗き込んでくるのだ。

「射的当たらないの?」

「俺達教えてあげようか?」

「なんなら、取ってあげようか?」

「いや、景品が欲しいというよりゲームを楽しんでるだけだから」

だからお呼びでないのだと、サービスでもらった弾をさっきも狙っていたキャラメルの箱に向けて撃ちこむ。

見事命中はするもののパタリと後ろに倒れるばかりで落ちはしなかったそれには小さな溜め息一つ。

「おいちゃん、ありがとうね。楽しかった」

そんな一言でさっさとこの場を離れようと思っていたのに。

「えー、もうちょっとやっていこうよ」

「一人なら時間もあるでしょ?」

「なんならなんかルール作って勝負しようよ。で、俺達が勝ったらおねーさんは俺らと一緒に行動するってどう?」

「………じゃあ、ここにある景品の中で一番高そうなの撃ち落として。出来たら考えてもいいけど」

ウザいんじゃ、ボケェ!!という本心ダダ漏れの冷徹。



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