キスすらできない。
彼女の言い分は尤もで納得もする。
言われてしまえば確かに間が悪く、酷くて狡い。
それでも、今掴まずにいつ掴むというのか?
今捕らえず、いつ?
次があるなんて保証がない。
手が届いているのに掴まず時期を図るなんて馬鹿はする筈ない。
だって……
「俺が好きだろう?ピヨちゃん」
「っ……」
「昔から……今だってきっと……」
「………」
「『好きじゃない』って言ってもいいよ。……好きにならせるだけだ」
「っ………酷い、」
「変だな……『酷い』って言われるほどに『好き』だって言われてる気がする」
「っ………」
この状況で酷いと感じるのは裏にある好意が疼くからだろう?
そんなの聞くまでもない。
もどかし気に、形ばかり非難するような彼女の表情が良く語る。
勿論、まだ手放したばかりの恋への痛手も未練もあるんだろう。
幸せになってはいけないという贖罪も。
でも、全部ひっくるめてでも抱き込みたい。
今度こそ……。
「っ……」
こうして触れられる時間を永遠に…。
「……先……生、」
「うん、」
「っ………………っかりました」
「………うん?」
「うん…………わかりました」
「…………うん?」
「…………………結婚しましょう」
「…………………………ん?」
「うん……結婚だ。……結婚しちゃいましょう、うん」
「…………………………はい?」
一体……何がどうなってそういう結論に至ったんだろうか?