キスすらできない。
何かを諦めたように、決意したように、腹を括るように。
息を吐きだした彼女が放った一言はあまりに結論に飛びすぎていて。
これもまた大量に摂取したらしいアルコールのなせる技と言うやつだろうか?
流石に極論なその一言にはこちらの方がポカンと固まってしまって。
そんな間にも、
「とりあえず……結婚って言ったら婚姻届けですよね。……うん………うん……コンビニだ」
「えっと…………え?コンビニ?昨今の結婚ってコンビニで出来るの?」
「出来ませんよ。そんなお手軽に出来たらコンビニは駆け込み寺で大繁盛です。そうじゃなくて…『プロポーズされたら?』」
「………えっ?……何それ?」
「『ゼク〇ィ』でしょう!結婚情報誌!付録で婚姻届けとかついてるんですよ」
「あ……成程……ってか……待って。本当に結婚する気なの?」
確かに捕えおきたいと欲求をぶつけたのは自分だ。
それに対してのこの彼女の反応や行動は願ってもないものだけども。
それでも疑問として音にして響かせれば、スッと絡んできた眼差しと静かなる微笑みと。
「コレは……罰なんです」
「……………はっ?」
「私にとっても罰で贖罪で、先生にとっても罰」
「………どういう……」
「もし、私が【呪った】事で先生が独りになってしまったというのならその責任はとって一緒に居てあげます。先生が望むまま、先生が思うまま私を先生一色に染めてしまえばいい。それこそ、痛みや苦しみまで全部」
「俺の……罰は?」
「……手が届くのに掴めない事。自分の理想通りに私を染めていくのに女として私を抱きしめられない事」
ああ、それは確かに……罰に相応しい。