キスすらできない。
「緊張の糸が……」
そうでした。そうだったんでした。
私と先生はそういう事しちゃえる関係でした。
忘れていたわけでないのにどうしてか現実味が湧いてなくて。
いや、知らず知らずに現実逃避してたのか?
なんて、朝からの思考もまた現実逃避の一つ。
それでもある意味現実を受け止めようとしているからこそ私は今ここに来ているんだろう。
下着屋に。
べ、別に新調する事ないんじゃないの?
今更気張る必要ないんじゃん?
だって、相手は先生だよ?
私と先生だよ?
わざわざ新しい下着で気合い入りすぎてるなって丸わかりなのどうなのよ?
それに、下着なんて見て楽しむのも一瞬じゃない?
まして夜なんて必然の様に暗いじゃない。見えないじゃない。
そうなれば気合いの入った下着なんてますますの自己満足よ?
持ち合わせの下着だって別に草臥れてるわけじゃないんだし…。
あ、このブラ可愛い。セットのベビードールもクソ可愛いっ。
ええっ、てかってかっ…
可愛いとセクシー、先生の好みってどっちよ?
ダメだ、頭の中で松◯亜弥の歌がリフレイン…。
そもそも先生に好みなんてあるの!?
なんなら女体にすらそんなに興味ある様に思えないのにっ!!
……えっ?
まじめに興味あるの?
と、まあ、見事堂々巡りな残念な思考よ。
そもそも興味がなきゃ誘われてないんだって。
結局はそこだ。
そこに辿りついては阿呆みたくドキリとする。
ドキリとジリっと…。
その時間に思いを馳せて、耐えきれない羞恥から今の様な現実逃避に逃げているのだ。