キスすらできない。


勿体ないけど…いざ実食!!

なんて、手を合わせたタイミングだ。

「……何か買ってきたの?」

「へっ!?」

「いや、ワインの袋以外にお洒落な紙袋があるなって思って。良い服でもあったのかなって興味本位」

『ええ、今夜に備えてムード作りな下着を二着ほど』

……なんて、言えるか。

きっと先生からしたら特別深い意味はない追及なのだ。

中身は実はコレだろう?なんて意地悪な予測すらしていない単なる疑問。

こちらをの反応を楽しもうなんて悪意はまるでない姿はモソモソとおにぎりを食べきって湯飲みのお茶を啜るのだ。

そんな姿をおにぎりを手に固まって見つめる間にも、思考の方はフルに目まぐるしく働いており。

『はい、可愛い服があって』

と、サラッと返すべきか…。

いや、その流れで万が一にも『見せて』なんて言われた日にはどう誤魔化す?

ってか、こんな風に返答に躊躇っている間がすでに不自然だし。

もう、ここはいっそあっけらかんとした大人の女を発揮に『どっちが先生の好みかしら』って余裕に構えればいいんじゃない!?

あ、それなんか良い。

散々子供扱いされてきたんだ、ここで一発私だって大人なんだって事を見せつけてやろうじゃないか。

と、変な決意が固まってしまえば、自分の片手は紙袋に伸びていて。

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