キスすらできない。


さあ、言うのよ。

大人の微笑みで『どっちが好み?』って……

「先生!どっちが先生の好みですか!?」

あれ?

なんか声張った上に敬語になっちゃった……

「……ブハッ」

「っ……」

「クックックッ……」

「っ~~~」

ひぃぃぃぃぃ~!!

あの滅多に笑わない先生を笑わせてしまった。

普段なら喜ばしい一瞬であるのに、今この瞬間は素直に喜べない。

寧ろ……全力で穴掘るからそこに埋めてほしい……。

私の理想とした大人の余裕はどこ行った!?

脳内ではしっかりと妖艶な駆け引きで下着をチラつかせる自分象が出来ていたというのに。

実際は二種類の下着を両手に勢いよく先生の前に突き出し、子供が判断に迷っているかのような勢いで問いかけてしまっていたのだ。

それを真正面からやられた先生と言えば、呆気にとられたのは一瞬で、すぐに口元を覆うと俯き噛み殺したような笑い声を響かせたのだ。

心底やっちまった。

よくよく考えれば私が敬語外したオトナモードなんて先生に出来る筈なかったんだ。

ううっ……私の馬鹿。

と、いくら思おうが…

後悔先に立たず…。


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