キスすらできない。

「ククッ…あー、もう本当……」

「っ……」

「ピヨちゃんと居ると本当に毎日がビックリ箱」

「も、もういいです。もう言わんでください。自分が今衝撃的に痛い奴だって自分が一番気が付いて撃沈してますから」

「飽きなくて可愛くて満たされてるって言ってるんだよ」

「っ……」

ず……狡い。

その心底和んだ薄ら笑みでそんな甘い事言うなんて狡い。

消化不能であった筈の羞恥心でさえ吹き飛ばす勢いの新たな動悸の手強さというのか。

しかも、コレがまた仕事モードスタイルだから余計になぁぁぁ。

髪はキッチリせっとされてるし、シャツとネクタイがまた出来る男を演出してるし。

ってか、私の中の記憶のまさに『先生』なスタイルなんだ。

そんな先生の手がスルリと伸びて差し出していた下着にそっと触れてくるのにはこれまたドキリと心臓が跳ねあがる。

「ほんと……ピヨちゃんの可愛さは狡いね」

「っ……ど、どこがっ!?お馬鹿を晒しただけじゃないですか!?」

「少なくとも……俺を煽るのは実に上手だと思うよ」

「あ……煽られる!?どこがっ!?わ、私、大人の色気とか全然発揮できなくて、だから絶賛『やっちまった!!』とへこみ中なんですが!?」

「うん、その全部が可愛い。……今すぐどうにかしてやりたいくらいに……可愛い」

「っ~~~」

「……俺に抱かれるのにワクワクと準備してるピヨちゃんが本当に可愛い。遠足前日の子供みたいに無垢としたワクワクなんだもん」

「そ、それ……褒められてるのか貶されてるのか大人としては微妙……」

「なのに、言ってる事は『A社とB社、どっちの精力剤飲んで挑待ってようか』ってくらいにパンチはあるな」

「っきゃあぁぁ!もういいっ!!すみませんっ!もうこの話終わりにしましょっ!?」

もう充分だ。

ってか居た堪れないわっ!

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