キスすらできない。

そんなつもりはなかったけれど、確かにその例え話との一致も否めない。

そう気が付いてしまえばますます自分のやっちまった感の倍増というのか。

もういいのだ。と、すかさず突き出していた下着を引っ込めようと手を引いたというのに、

「こっち、」

「っ……」

「こっちの、オリーブ色が好みだし……ピヨちゃんの白い肌に映えそう」

「ま……真顔で答えますか、」

「なんで?答えるよ?俺の為にピヨちゃんだって真剣に迷った上でそれでも決めかねて厳選して二着に絞ってきたんでしょう?真剣に選んだ物に真剣に答えを出すのは当然の事で誠意だと思うけど」

「っ……」

「まあ……、本音を言ってしまえば、ピヨちゃんってだけで充分にワクワクとしてるんだけどね、おじさんは」

「も……全部が狡いです」

「お互い様です」

「……はあ……先生、」

「ん?」

「………先生に抱かれるの、年甲斐もなくワクワクしてます」

「……先生も、ピヨちゃんを抱くの年甲斐もなくワクワクしてます」

どんな会話なのか。

色気もなにもあったもんじゃない。

酷く穏やかな昼時の何気ない日常会話の如く。

大人の駆け引きなんて皆無。

寧ろお互いに胸の内を子供の如く晒しあっているんだから。

でも、本当……ワクワク、ドキドキ。

まるで……思春期みたいな…。

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