キスすらできない。


そうして、自分の期待に満ちた顔と対面してしまえば。

発熱…。

先生の馬鹿。

こんな風に前もって宣言されちゃったら、逆に構えが難しい。

もしかしたら。なんて淡いものであるなら装備の幅は広がるというのに。

服も顔も髪も。

どこまで着飾って装うべきか、そのボーダーラインがブレブレで。

本来、いつも通りであるなら楽で色気もなにもない部屋着に身を包み、入浴後であるならすっぴんに髪はピン留めであるのだ。

流石に、ピン留めはしてない。

迷ったけれど化粧もなし。

ほんのり色付きのリップで唇に潤いは与えてあるけれど。

服に至っても華美な一張羅なんてものは纏わずに、それでも少し可愛げがある部屋着をチョイスした。

それだけなのに、どうしてか前置き一つあるだけでこんな些細な変化が過剰に見えて。

あー…もう…。

『先生も、ピヨちゃんを抱くの年甲斐もなくワクワクしてます』


「ワクワクドキドキが止まらんのですよ、先生」

緊張とか羞恥心も大きく心に幅取りをしているのに、それを上回る興奮や期待が自分の神経を支配してしまって。

性欲溢れて欲情しているとは違うのだ。

【先生と】縮める関係にどうにも歓喜が疼いてしまう。

そうして、訪れる時間を脳裏に思い浮かべてしまえば、流石に扇情さに負けて正気に戻るのだ。

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