想い花をキミに
お湯の気持ちよさと優しく触れてくる手のぬくもりについ、ぼうっと無意識に彼の顔を眺めていた。すると、「なあ。」と急に顔をあげた彼と視線が交わった。

慌てて目をそらしたけど、「さっきからずっと見られててやりにくいんだけど。」と彼には私がずっと眺めていたことが既にバレバレだったみたいで、恥ずかしさのあまり俯いてしまう。

「ご、ごめんなさい。」

「別にそこまで謝ることでもないけどな。」

「……。」

「ところでさ、お前足以外も怪我してるとこあんだろ。ちょっと見してみ。」

私の両足の消毒を終えた彼が、私の右手を掴み洋服の袖をまくり上げた。

そこには真っ青な痣がいくつもあった。

「……。」

無言でジッと私の痣を眺めた後、彼は何も言わずにそっと袖を元に戻した。
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