想い花をキミに
「何で今なの?」

とできるだけ落ち着いて聞き返すと、

「俺のだっていう証が欲しい」って彼は言うの。

「俺だけなんだって思わせてくれ」と捨てられた子犬のような目で上目遣い気味に訴えてくる彼は、どこか怯えた様子だった。

隼太の様子がおかしいのには最初から気が付いていた。
何かあったんだなってことも。

だけどそれを私に話してくれないのもまた、何か理由があるはずだから、拒む理由もなかった私はすんなり「いいよ」と受け入れた。


それから彼は私をゆっくりとベッドへ押し倒し、何度も口づけを交わした後、深く深く私を求めた。

明け方のまだ薄暗い景色の中、ぎゅっと目を閉じている彼の瞳には私が映っていないような気がして、何度も私は「隼太」って呼んだの。

私がこういうのを初めてってことを分かっているのかどうかは不明だったけど、
彼の気持ちが落ち着くのであればこれでよかったんだと思った。


その日の日中はもういつも通りの隼太だった。
私も明け方の事を掘り返す気にはなれなくて、何もなかった振りをしていた。
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