想い花をキミに
気が付いたら私は泣きながら隼太の元へ向かって夜道を走っていた。

家に着くなり彼の胸にしがみついてわんわん泣く私を、隼太は何も言わずに背中をさすって慰めてくれた。
多分私の唇が切れているのを見て、継母にやられたんだってすぐに分かったんだと思う。
だからあえて何も聞かずにいてくれるところが隼太のいいところ。

しばらくして少し泣き止んだ私に、「今日泊まってく?」と遠慮がちに聞いてくるから、少し迷ったけど「うん」と答えた。

なんの為にあの家に帰るんだろう。
私はあの人のストレスのはけ口じゃないのに。

あの人から受けた傷を癒すかのように、「もっとぎゅっとして」って何度もねだってきつく抱きしめて貰った。

そうじゃないと自分が自分でいる意味を見失いそうで怖かったから。

隼太は無言でぎゅっと私を抱きしめる腕に力を込めてくれた。それでも全然足りないから「もっと強く」って言ったら「これ以上は苦しいだろ」って返されたけど、その代わりに私の頭に顔をうずめて、「誰よりも近くにいてやるから」と言ってくれたから私は安心して目を閉じることができた。

隼太の温もりに包まれて、自然と辛かったあの人の記憶も薄れていくような気がしたの。

やっぱり隼太は私の救世主だね。

< 107 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop