想い花をキミに
「だからその時まで、笑顔でいてね。あさかちゃん!」

「うん!……っくんもだよ。」

そう言って彼は引っ越していった。
雪が降る少し前の肌寒さをはっきりと覚えている。

その夜は彼がくれたダイヤモンドリリーを抱いて眠ったけど、一週間もしないうちに枯れてしまって大泣きしたな。

あの頃の私は、こんなに綺麗な花が枯れるっていうことを知らなかったから。


目を覚ますと私はまだフローリングの上にいた。

「夢……か。」

あの時の彼の名前だけはどうしても思い出せなかった。
けど彼の父親もたしかお医者さんをしていると言っていて、私のお父さんのところに会いに来ていたような気がする。

よくは思い出せないけど……

"ダイヤモンドリリー"

幼心に美しいと感じたあの花をもう一度見たいと思った。

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