想い花をキミに
私はあの人が1日中家にいる時に同じ空間にいるのが嫌で、家を出て近所を散歩していた。

こんな道もあったんだな。

今まで通学路と駅までの道しか歩いてこなかったから、初めて通る道があるとなんだか子供のようにワクワクしてくる。
隼太の家から連れ戻されてから何かに感動するとか楽しいって思う感情を失っていたから、久々に経験するこの感じが私の歩みを速めていく。

お花屋さんもある!

初めて見る小さなお花屋さん。店内には名前も知らないお花がたくさん並んでいる。
私は吸い込まれるように中に入っていた。

「いらっしゃいませ」

中にいたのは50代くらいの女の人だけ。

「あ、すいません。ちょっと見ていってもいいですか?」

緊張気味に私が言うと、その方はニッコリ笑って、

「どうぞ。ゆっくり見ていってね。」

と言った。すごく優しいおっとりとした話し方。
やっぱりこういう綺麗なお花に囲まれて生活していると心まで穏やかになってくるのかな。

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