想い花をキミに
「あ！でもね──」

その方は思い出したように突然両手の平を合わせて声を上げた。

「昔ね、私のところに花を買いに来た男の子がいたの。その子はまだちっちゃいのに一つ一つの花をじっくり眺めて、"これ下さい！"って言ったの。私なんだか不思議でね、何か違うの？って聞いたらその子は、大切な子にあげるお花だからその子が見た時に笑顔になれるような綺麗なお花がいい"って言ったの。懐かしいなあ。私、そんなこと言った子初めてだったからもう驚いちゃって。」

と懐かしそうに笑いながら話してくれた。

へえ、そんな子がいたんだあ。きっとその花をもらった子も、そんなに真剣に選んでもらったんだから嬉しかっただろうな。

「ちなみにその男の子はどんな花を買ったんですか？」

興味本位で聞いてみると、「これよ。」と言ってその方が見せてくれた花の名前を、私は知っていた。
花の知識なんて全然ない私だけど、その花だけは知ってる。

「ダイヤモンドリリーっていうの。綺麗でしょう。」


"日の光にあたると宝石みたいにキラキラ輝くからダイヤモンドリリーって言うんだ。"


「日の光にあたると宝石みたいに輝くからですか……？」

「そうよ？よく知ってるわね。」


"また会う日を楽しみにっていう意味があるんだ"


「また会う日を楽しみにっていう意味の……」

「そうそう。あなた花が好きなのね。よく知ってるわ。」

「たまたまです。この花だけは」

この花だけは、初恋の彼が教えてくれたから。

< 116 / 211 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop