想い花をキミに
甘い気持ちに包まれながら、ゆっくりカップをすすっていると、

「なあ。」

と、つかの間の沈黙を破った彼が私の目をまっすぐに見つめて、

「自分から死を選ぶことほど無駄なことはないと思うよ。」

と言った。

両手で持っていたカップを握る手に力がこもる。

彼は最初から私が公園で眠っていた理由に気が付いていたのかもしれない。

「え....。」

少しとぼけた感じに言葉を濁した私。
だけど彼は真顔で私の方へ体を向けると、私の目を真っ直ぐに見つめた。

「いいか。きれいごとだけ並べてるかもしれないけど、生きていることの方がよっぽど価値があるんだ。この世界には今日を生きたくても生きられない人が大勢いる。何がつらいかはよく知らないけどさ、生きていれば誰だって幸せになれる時が来るって俺は信じてるから、今は取りあえずでいい。小さなことでいいからやりたいこと、生きたい理由を見つけて、それを叶えるために今を生きてみたらどうだ。」

私を見つめる彼の視線があまりにも真剣で、私はその圧力に耐え切れなくなって思わず視線を手の中のカップへとそらした。

すると突然、目を伏せた私の頭に大きな手が触れたかと思うと、力強く撫でられた。
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