想い花をキミに
まさか、と思った。

「交渉って……」

「お金、とかだよな一番手っ取り早くて簡単な方法。汚いやり方だけどな。」

これで納得した。あの人が急に警察を使って私を呼び戻した訳が。

「でも私、そんな話聞いてないよ。第一別れろなんて言われてないし……」

「これから言うつもりだろ。今のうちにせいぜい楽しんでおけってところか。」

今のうちって

「やだよ……私、別れるなんて絶対に嫌!」

「俺だってやだよ。」

「嫌……」

隼太の腕を両手で掴んで子供のように握りしめる私。
隼太がいない生活なんて全然想像できないよ。

「何度も親父に交渉したんだ。病院は継ぐからせめて結婚だけは自分で決めた人とって、だけど頑固でさ……全然聞いてくれねーの。」

ソファーにもたれながら頭を抱える彼の仕草に、一人でどれだけ悩んでいたんだろうという思いが溢れる。

じゃあ朝帰りしてた理由はそれなの?
私と別れないために頑張ってくれてたんだね。

そうとは知らない私は勝手に隼太ムカついたり怒ったりと自分のことばかりで……全然気づいてあげられなかった。
家に着いて以来立ち尽くしたままだったことに気が付いた私は、隼太に近づくとその隣に腰を下ろしてコツンと額を肩に乗せた。

「辛かったでしょ。何にも知らなくてごめんね。」

そんな私の頭を自分の方に引き寄せて「辛くなんかないよ。お前のためだから。」と言ってくれる所が嘘でも隼太らしい。
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