想い花をキミに
隼太のお父さんと向かい合って座る私の目の前には、コーヒーとミルクティーが一つずつ並んでいる。

でもカップから立ちこめる湯気を見つめるだけで飲もうという気にはなれない。

「そんなに緊張しないでください」と隼太のお父さんは私に優しい声をかけてくれるけど、その言葉が却って私の背筋をピンとさせる。

おかしな展開だと思う。

さっきまでの私は、買い物を済ませて早く帰って夕ご飯の準備をしよう、隼太は今日も驚くかな、なんてそんなことを考えていたのに……今こうしてこの場にガチガチになって座っている私は、これからどんな話を切り出されるのかと思うだけで冷汗が止まらない気持ちになってる。

目の前のコーヒーカップを手に取ると一口飲んでからそのカップを置いて、隼太のお父さんは話し出した。
私は太ももの上に置いた両手をぎゅっと握ってどんな事を言われるのかとドキドキしていると、

「隼太はね、自然が大好きなとても明るい子でした。とにかくやんちゃで元気いっぱいでね──」

語りだしたのは隼太の事。

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