想い花をキミに
「はぁ……」

思ってもいなかった内容のせいか、思わず私は緊張していたことも忘れてその話に夢中になった。

優しくてお年寄りに自分から手をかすような子だったこと
大きくなったらバスケットをやりたいといっていたこと
隼太が小学生に上がる前に引っ越したこと

「引っ越しのせいで大好きだった子と離れ離れになることを嫌がって、しばらくふてくされて私とは口もきいてくれませんでした。」と隼太のお父さんは当時を懐かしむように語った。

思わず笑ってしまった。

隼太のお父さんはその"大好きだった子"というのが目の前にいる私だと知らないのかな。
幼かった隼太は明るく私とお別れしたように見えてたけど、本当は強がってただけなんだね。今もそういうとこは変わってない気がする。

隼太に対する愛おしさがこみ上げてきた。
こういう話を聞いてしまったら、もっともっと隼太を好きだと思ってしまうから辛い。

「だけどね、」と隼太のお父さんの声色が変わった気がした。

「私は自分のせいであの子を一人にしてしまった。」

自分のせいで、というのは仕事のせいということかな。
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