想い花をキミに
「隼太から聞いているだろう?その通りなんだ。私はあの子の一生のうちで最も大切な時間を、一緒に過ごしてあげることができなかった。」

悲しそうな目をしていた。

「後悔、されてるんですね。」

「ああ、そうだね。とても後悔している。」

そこまで言うと、隼太のお父さんの顔つきが真剣になった。

「だからだ、清宮亜砂果さん。」

「え?」

フルネームで呼ばれて思わず間抜けな声が出た。

「どうかこの通りです。息子を、隼太を諦めてくれませんか?」

突然本題に入ったから、頭がついて行かなくて焦る。

「ど、どうしてそうなるんですか?」

「隼太は私の病院を継ぐ大事な跡取りなんだ。今まで苦労させてきた分、あの子には幸せになって欲しいと思ってるし、できることならあの子が自分で選んだ人と一緒にさせてあげたいと思ってる。だけどそれではダメなんだ。病院の経営のためには、隼太をぜひ欲しいと、向こうの取引先の娘さんが強く望んでいて断るわけにはいかないんだ。」

と私に訴えた。

「それで隼太は幸せになれるんですか?」

率直な疑問だった。でもとても大切なこと。
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