想い花をキミに
隼太のお父さんは再び悲しそうに目を伏せると、

「たしかに、今は辛いかもしれないな。無理やり別れさせた所であの子が幸せになれるとは言えない。だけど、そうしたら病院にいる患者はどうなる?経営がうまくいかなくなって病院が潰れるなんてことになったら……」

それは私にもよく分かっていた。
ずっと考えていたことだったから。

「あの子に言ったんだ。あなたとの交際を諦める代わりに望むものはなんでも用意すると。だけどあの子は、"望むものなんか彼女以外にない"ってそう言い切ったんだ。」

隼太のお父さんから聞かされた彼の本音。
途端に胸が熱くなった。
何もない私の事をそんなに想ってくれていたなんて。

だけどその気持ちを優先することで、路頭に迷う人や苦しむ人が大勢いるってこともまた事実で、そうなったら私はどうしたらいいか分からなくなる。

「あの、隼太君の結婚以外で病院の経営をうまくする方法ってないんですか……?」

経営に関してど素人の私が思ったままの質問を投げかけると、隼太のお父さんは苦笑いを浮かべた。

「私もそれは考えました。だけど先方の社長がどうしても結婚を、と条件にして譲らないんだ。おそらく娘さんの影響が強いと思うんだけどな。」


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