想い花をキミに
「そう、なんですか。」

顔も知らない社長の娘さんが隼太を気に入った、つまり好きになったということ。
公私混同もいいとこだけど、ライバル以上に私では到底太刀打ちできない相手なのだということは分かった。

誰かを好きになったらどんな手を使ってでもその人が欲しくなるもの。
ましてや親の力に頼って手に入るのであれば誰だってそうするでしょ。
気持ちなんて、結婚してから振り向かせればいいもの。
結婚という法的制度と資金援助という名目で隼太を縛ってしまえば、たとえ気持ちが向かなかったとしても逃げることはできないから。

八方塞がり──、隼太の置かれた立場はまさにそんなところ。

「だからどうかお願いします亜砂果さん。隼太を諦めてくれませんか。その代わりと言っては何ですが、あなたの進学費用や今後の生活に困らない程度の金銭的支援は、十分に行うつもりです。もちろん、一生隼太に会うなとは言いません。お友達としてなら、これからもいい関係を築いていって欲しいと思ってます。」

隼太のお父さんは切実だった。

隼太と別れれば今後の私の安定した生活が保証される。
もうあの人と一緒に暮らさなくてもよくなる、そんな考えがチラッと頭をよぎった。
だけどその代わりに、私は隼太を好きだと言えなくなる。
いい関係を築く?友達?
今更そんな関係になれるはずないでしょ、と心の中でつぶやいた。

お金か、隼太かどちらかを選ぶとしたら、答えは絶対に後者だと決まっている。
その気持ちは何があっても変えたくない。
だけど、

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