想い花をキミに
「少し、考える時間を貰えますか?」

私は迷っていた。
自分の幸せの為に、彼の将来を潰していいものかって。その結果、多くの人が苦しむことになってもいいのかって。

「ええ、一度じっくり考えてください。」

そう言って隼太のお父さんは連絡先を書いた名刺を残して立ち去った。

残された私は、冷めきったミルクティーのカップを眺めながらどれくらいの時間そこにいたのかは分からなかった。


最後の選択をする時が迫っていた。


家に帰ると心配したように隼太が玄関の外で待っていた。

何時間もカフェで座っていた私の鞄の中で隼太からの着信が鳴り響いて初めて、私は一気に現実へと引き戻された。

「遅かったから心配した。」と言って私の肩に触れた隼太の手があまりにも冷たくて、彼がずっと外にいたんだということが分かった。

「ごめんなさい。ちょっと人と会ってて」

「そっか。早く中に入ろう。」

隼太のお父さんに会ったことは言えなかった。
それを伝えてしまえば、決断を迫られるような気がしたから。

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