想い花をキミに
これで雪なんて降られたら、隼太と出逢った日の事を思い出してますます辛くなるだけだもんね。
これで良かったんだ、と自分に言い聞かせて自宅への帰り道を一人歩くけど、気丈にふるまっていた気持ちも徐々に弱まっていき気が付いたら涙で視界が歪んでいた。

耐え切れずに私はその場でうずくまり、声を押し殺して泣いた。

必死に押し殺したはずの声も、誰もいない静かな夜では大きく響き渡ってしまい、口元を手で押さえながら泣いた。


大声で泣けたらいいのに、そんな場所すら私にはないんだ。

私の涙が乾いたアスファルトを湿らせていった。


"今日、荷物取りに行くね。"

隼太にそう連絡したのは、彼に別れを告げた一か月後だった。
気持ちの準備が中々できなくて気が付いたら一か月が過ぎていた。
私はあえて隼太が学校へ行っている時間を狙って荷物を取りに行くことにしたの。
だって彼に会ってしまったらまた辛くなると思ったから、このまま会わずに別れたほうがいいと思って。

学校をさぼって中に入った私は合鍵を使って中に入る。
だけどそこで私の動きが止まった。

「どうして……」

そこには学校へ行っているはずの隼太の姿があった。

「今日来るって行ってたから、待ってた。」

「別にいなくても良かったのに。」

一か月ぶりに見る彼の姿に、この胸はまだ彼を好きだというかのように高鳴り始めるの。

「うん。そう思ったけど、最後だから会いたいと思って」

と彼が口にした"最後だから"という言葉に、また私の胸が痛んだ。

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