想い花をキミに
「そんな勝手なこと許さないよ。」

あの人は相手にもしないというように私から視線を外すと、再び口紅を塗りだした。

「第一県外に行くだなんて、そしたらあんたの好きなあの彼とは離れ離れになるじゃないか。それでいいのかい?」

私の弱いところをついてこようとするけど、

「もう彼とは終わったから。」

と冷静に私は告げた。

「終わった?」

再びあの人は私に視線を向けた。だけどその目はさっき私が県外に進学すると告げた時よりも大きく開かれていて、

「ふざけんじゃないわよ。まだお金だって貰ってないのに」

と怒りで肩を震わせながら鞄の中をごそごそと探り出すと、一枚の紙きれを取り出した。

「話が違うじゃない、ったく。」

よくみるとそれは隼太のお父さんの名刺だった。

「どうしてそれを持ってるの……?」

「どうしてって貰ったからだよ。」

戸惑う私の前で面倒くさそうに名刺を見ながら携帯電話を掴んだあの人は、その番号を一つ一つ確認しながらダイヤルを押していく。

「会ったの……?彼のお父さんに」

「そうだって言ってんだろ。父親じゃなくて部下って言ってたけどね」

ようやく分かった。この人が急に警察を使ってまで私を隼太から引き離した理由が。
隼太が言っていた通り、隼太のお父さんはこの人にもお金で解決するように持ちかけたんだ。
それでこの人は承諾した、お金が手に入るんなら、と。
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