想い花をキミに
「バイト中だろ?いいの?」

「他にお客さんいないし平気。」

そう答えると、思い切って「今日あと1時間であがりなんだけど、一緒に帰らない?」と言ってみた。

水を飲んでいた彼は、「えっ」と驚いた感じでコップをテーブルへ置くと、少しだけ間が開いた後に、「いいよ」と言った。

嬉しくなった私は「じゃあゆっくり食べてね。」と言い残し、カウンターの中へと戻った。
胸の前で小さくガッツポーズをしながら。


バイトを終えて外に出ると、既に外では隼太が待っていた。
実はバイトを終えてから少しだけメイクとか髪型を直してたから時間がかかっちゃったの。

「ごめんね。お待たせ。」

「全然待ってないよ。じゃあ行こっか。」

「うん。」

並んで歩く私たち。

だけど二人の間には30センチ以上距離があって、その距離が私たちの関係を友だちなんだと語っているかのようだった。

「家ってここから近いの?」

「まあ、歩いて10分くらいかな。そっちは?」

「俺は20分くらいかな。反対方向だけど」

「え、反対なの?ごめん、遠回りさせちゃった」

一緒に帰ろう誘ったのはいいけど、彼の家の場所までは考えていなかった。
「いいよ気にしなくて。」と彼は言ってくれるけど、心の中では「やっちゃったな」という気持ちでいっぱいだった。

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